おれ流~標本作製 ② 軟化

外国産のミヤマの標本を購入した場合を前提に、

【軟化⇒展足⇒乾燥】という手順で行う。

(採集したミヤマを標本にする場合は、また別の機会に。)

Step. 1 軟化 
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: 一般に、図のように煮干のごとくカラカラに乾燥した状態でパッキングされている。

まずは水分を含ませ、柔らかくさせる。

私は、もっぱら軟化には「お湯」を用いている。

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虫の種類や標本の状態によって、アルコールや水分を含ませた脱脂綿のタッパーに入れることが一般に言われていることである。


私は「お湯」につけて軟化する。
これが一番「時間がかからない」。 
“Time is money.”だ。

ミヤマに限っていえば、変色などの不都合はなく、ほとんど難なく作業できているし、
さらに言えば、すぐに【展足⇒乾燥】というプロセスにもっていける。

私のように、手をつけたらさっさと片付けたいタイプの方にはちょうど良いと思う。

しかしながら、軟化する前には、
少なくとも1日は無水エタノールに浸した脱脂綿入りのタッパーの中に入れ、
消毒をこころがけたい。

すべては殺菌のためだ。




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では、軟化の流れを。

まず、タッパーに熱湯を適量を入れる。

これに、ミヤマを投入。

このとき、ふやけた汚れをでさっと綺麗に取ってしまう。

10秒ぐらいお湯に漬けたら、ティッシュに乗せる。

壊さないように慎重に触れ、関節がふらふらになっていればOK。

ティッシュに包んで水気を切る。



状態の良い標本なら、死んだ直後のように体勢を保つので、壊れる心配は皆無である。


しかし、たやすく動かせないほどに硬い状態であるならば、再度、適宜お湯に漬ける。

たいてい、健全に薬品で処理された状態の良い標本は、難なく関節がゆるくなるはず。



しかし、
標本の状態によって以下のような違いがでるので覚えておいていただきたい。
 
①腐った標本
死んで腐った状態で乾燥したものは、お湯に入れるとばらばらに崩れる。
フランスラベルのL.cervusに多い。
つまり、頭・胴が外れたり、符節が取れたり、触角が折れたりする。

数をこなしてくると、このようになる個体は臭いなどで予想が付くので、お湯に漬ける時間をほんの数秒にすればいい。または、アルコールに柔らかくなるまで適当に漬けるのも、殺菌効果も期待でき、妥当な手段だと思う。


②油の出た標本
ミヤマには少ないが、油が出ている個体(L.cervusの小型♂や♀に多い)は、タッパーのお湯に漬けると、油が溶け出て、油膜が発生する。
油が出ているものは、おそらく腐ってはいないので、耐久性はある(=ばらばらにならない)はずだから、筆に、油を落とす台所用中性洗剤を一滴程度含ませ、軽く擦って油分を取り除く。

完全に油を抜きたい場合はアセトンを使うべきだが、私はこれで間に合っている。
あまりごしごしやりすぎて、ミヤマの体の微毛まで取ってしまわないようにしたい。


③硬死した標本
古いパッキングの欧州の標本、中国のヒメミヤマ系に、どのような薬品を使ったのかわからない(おそらく強い酒の類?)が、カチカチで全く柔らかくならないものも存在する。

こうしたものは、逐一確認しながらお湯が冷めるまで長く漬けてみたり、故意に体の各部位をはずして(壊して)、体内にお湯を侵入させて柔らかくする。


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さて、お湯からあげた後のポイントは以下である。
k-sugano氏の『くわ馬鹿』の記事だ。これを参照させていただき、ミヤマで解説していく。

前足の処理:
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写真は軟化前のカチカチの様子である。まずは、甲虫の脚の構造への理解が必要だ。
それはつまり、脚の「基節」・「転節」・「腿節」の可動範囲への理解である。

この各部位を理解し、効果的に整形できれば美しく展足ができるのである。

写真は軟化した状態である。前脚を前方方向へ向けることができなければ、展足はできない。柔らかくなっていることを前提に、注意を払って腿節を前方に押して行く。
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無理をすると、「折れてしまう」。本当に、ミヤマは折れやすい。
経験が教えるところだが、ここは、本当に慎重に、かつ思い切ってやらなければならない。


中脚、後脚については、それほど問題は無い。
脛節と腿節に限らないが、関節を曲げるときは、軽くペキッと音がする。

ちょうど、我々の関節が鳴るのと同じ?程度なので、怖がる必要はない。
しかし、関節の動く方向に逆らうと、本当にすぐに折れるので注意!


大顎の処理:
閉じたまま固まってしまった場合、これを開かなければならない。

ほとんどの標本は、閉じて死んだままの状態でパッキングされている。
少し、力を加えて開かなければ、無理してはいけない。
私自身、結構な数のミヤマを壊して今に至る。
顎を開いた勇壮な顔を拝みたい気持ちを抑える「冷静さ」が必要だ。


このような場合、無理にこじ開けることは止めたい。

一旦頭部を取り外す。
そして頭部と前胸部をつなぐ穴から尖ったピンセットを入れ、
大顎の付け根あたりの筋肉をかき出すように突付く。
そうすれば、大顎は難なく開くのである。

慣れてくれば、半分頭部を胴に繋げたまま、開くことが可能だ。
もちろん展足・乾燥後は、接着の必要はない。

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全体の整形:
そして、全体に移る。
符節や触覚は、ピンセットを用いて伸ばす。

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今までの処理で、頭部を前胸部から取り外した場合、
あるいは、状態が悪くばらばらになった場合は、
個別に展足するほうが綺麗にできる。

by Ginettino | 2007-09-19 02:34 | 標本作製 | Comments(0)

れんの博物学ライフの覚書スペース“オペ-ルカ”. 主としてミヤマクワガタ Lucanus [Coleoptera, Lucanidae]に関することをあれこれつづってゆきます。「ミヤマは数見なきゃ語れない」


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